「本を読む」と聞いて、どんな行為を想像するだろう。一冊の本を最後まで読み切ることだけが「本を読む」ことではないと思う。好きな部分を繰り返し読むことも、ぱらぱらと無作為に開いた頁から読む行為も「本を読む」という行為をもっと自由に捉えなおしてもらいたい。世の中にはたくさんの本が存在していて、題名はもちろん、本の形や色も千差万別だ。そこから本の内容を推測することもある意味「本を読む」行為な気もする。読んでいなくてもその本について語れることはたくさんある。どこで買ったのか、誰かから貰ったのか、なぜ興味を持ったのか、なぜ読んでいないのか…ここまで語ると読んだ気になってしまいそうだ。本を読んでいると、著者や登場人物と話をしている気分になる時がある。『喫茶店で松本隆さんから聞いたこと』は、読んでいるとまるで松本隆さんが隣に座っているかのような気分になる。その言葉はまさに喫茶店で語られるようなとりとめのない、しかし心に留めておきたい言葉ばかりだ。本の佇まいは、文庫本より少し背が高いくらい、表紙はさらさらと触り心地が良い。どこまでも持ち歩いてもらいたい。いつまでも読んでもらいたい一冊だ。