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『どこにでもあるどこかになる前に』藤井聡子著 里山社刊
「地元はおもしろい場所がない」
高山の若者からよく聞く声として挙がっているものらしいが、少なくとも私自身は”よく”聞くことはあまりないし、高山にはまだまだおもしろい場所はたくさんあると思っている。
それは有難いことに、若者たちにとって住職書房が面白い場所として認識してもらえているからかもしれない。
しかし、そういう事を言う彼ら自身がおもしろい場所を見つけられていないだけという可能性と、既にあるおもしろい場所を守っていこうとする地域住民が少なくて、結果おもしろい場所も少なくなっているという可能性を指摘したい。
そもそも、おもしろい場所なんていう曖昧なものは、能動的に探さなければ見つかるはずがない。ここでいう能動的な探し方というのは、実際にまちを歩いて、扉をひらくのにちょっとした勇気がいるような店に飛び込むこと。いつもとは違った道を歩いて、普段なら選択しない方向へ自身を投げ入れることだ。
彼らがいうおもしろくなさ、みたいなものを仮に、チェーン店ばかりの国道沿いの景色、都会の真似をしただけの場所しかない、と置くとする。
そうするとその反対は、個人経営の喫茶店、その土地の風土から生まれる建築物のある場所、のようになるだろう。総じてそういう場所はおもしろい。
おもしろい場所は得てしてなくなっていく一方である。だが、右肩下がりの角度を鈍角にすることはできるはずだ。そのためにはそこに住む人たちがどういう選択をするかが肝要になってくる。利便性や効率だけを求める選択をしてしまえば、個人店に足が向くことはないだろうし、大手ECサイトでの買い物は、地域の経済圏にお金が落ちることはない。
双方向の働きが必要なのだと思う。おもしろい場所がないと言うだけでなく、自ら見つける動きをすること。不便だから、よく分からないからといって、おもしろそうな場所をなくしてしまうような選択をしないこと。
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この本は、利便性を追い求めるための再開発によって、高架下にあるような味のある居酒屋、タバコのヤニが染みついたゴルゴ13が鎮座する喫茶店のようなおもしろい場所がなくなって、どこにでもある国道沿いの景色、明るすぎる照明のドラッグストアに変わっていくことに抗う人々が描かれている。
「地元」ということを考える時に読みたい一冊だ。
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